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現在の認識
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現在の認識
「木材が売れない」と云う言葉は今から二十年前くらいから出ています。もっと前から、すでに私がこの仕事に就いた三十数年前、すでにそういう言葉は囁かれていました。二度にわたる「オイルクライシス」と「バブル期」が終了してから、つまり下がって、上がって、その後は下がりどおしなのです。
木材が売れなくなると、材木屋としては、新建材を売る、住まいごと売る、と云う時代を経て、依然として木材は売れない時代を過ごしています。
その前提としては、工務店の力が落ちたことに起因すると思います。また材木屋もそこをお得様としていたことにより、良い時はそれでよかったのでしょうが、一旦落ちてしまうと、浮揚するきっかけを失ってしまいました。
そこで気の利いた方は、建築士の資格を取り、あるいは施工管理士などの資格を得て、より住まい造りに近い姿勢をとりました。大工を動かせて請け負う形を作りました。プレカットに始まり、水回り、サイディング材工、建具、床暖房、最近ではこれに太陽光発電などが入るかと思います。ここまで請け負えると金額は大きなものになります。わが社も一時この世界が見えましたが、一つ抜け、二つ抜けて木材をはじめとする単価の安いものが中心になりました。
二十年くらい前まで使われていた木材を構造材、造作材、下地材とわけると、構造材の多くはプレカット工場経由になりました。土台や柱なども数本ずつ増改築で使われるだけになりました。
造作材もその多くは建材メーカーのものにとって代わられました。建材メーカーのもので間に合わない所だけ、木材で加工すると云う時代になりました。その方が、「早くて安い」と云う要請にこたえるものになりました。
この結果、窓枠材やドア枠などは大半が建材メーカー品となりました。廻縁などは使わることが少なくなり、幅木もそれが建材メーカー品であっても「薄い」ものになりました。見た目のも貧弱なものが増えています。
こうしてつくられる住まいはリーズナブルですが、住まいとしては、そんなに長い時間もつものとは考えられなくなりました。
さて、木材市場には造作材が沢山在庫してあります。材木屋の目から見ると、かなり「お宝」に近いものもありますが、大半は、如何せん使われることが少なくなったものばかりです。本日は新東京木材商業協同組合で「新東京昭和会」の記念市がありました。が、造作材に関しては、「良いものだけれど、売れない」ものが沢山並んでいました。全く売れないわけではありませんし、いざ使いたいと思って探すと見合うものなかったりします。それでも引き合いがなければ、買いません。木材は加工の融通性を持っていますが、それゆえに注文される寸法も1ミリ単位で発注されます。同じものをたくさん作る仕事が以前にはありましたが、今は1丁ないし2丁などと云う風に個別に対応するしかなくなりました。これで大量に仕入れをすると採算に合わなくなったのです。
採算に合わなくなったことでより使われなくなりました。売れません。各材木店には少しずつあれば、間に合うものになりました。
この辺りから現在売れているものは、下地材を呼ばれる「隠れてしまう材料」です。材木屋は大半が目で見えるもの方見えないものを売る商売に変化してしまいました。この結果が、どこのお店も一人二人で仕事をする現状となったものと思います。
材木屋は楽をしすぎたのかもしれません。
2011/07/28(木)
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