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「小林旭読本」(私の本棚)
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「小林旭読本=歌う大スターの伝説」(私の本棚)
責任編集:小林信彦+大瀧詠一 発行:キネマ旬報社 定価:1905円+税
目次
はじめに 総論1 “渡り鳥”いつまた帰る 西脇英夫 総論2 アキラ節の世界 大瀧詠一 インタビュー 宍戸錠 アキラがいたからシシドがいたシシドがいたからアキラがいた
私のアキラ 野村孝 「無頼無法の徒・さぶ」より 高村倉太郎 バンコックの観客が「渡り鳥」を合唱 白鳥あかね 思いっきりの良いアクション 長谷部安春 仕事にのめりこむ人 山城新伍 いい老け役をやって欲しい 井上和男 本格的なセットが旭さんの念願だった 植松康郎 茶目っ気とプライドの人
アキラを求めて 渡辺武信 内舘牧子 吉川潮 中野翠 黒須洋子 谷中敦 立川志らく
鼎談 小林信彦+大瀧詠一+西脇英夫 資料

小林旭は昭和の30年代、当時の日活という会社の映画スターである。石原裕次郎と人気を二分していたが、これまで、語られることは少なかった。それは彼が人にへつらうことなく、孤高を保って生きてきたからに他ならない。この人はとっつきが悪いが、マニアには堪えられない魅力を持っているのではないか。映画が盛んだった1960年ごろには、「渡り鳥シリーズ」「流れ者シリーズ」「銀座マイトガイシリーズ」「暴れん坊シリーズ」という4つのシリーズを持ち、年間10本以上の映画出演している。そして相手役はいつも浅丘ルリ子。同じような娯楽作品で歌を挟んでアクションシーンの繰り返し。見ているほうは面白いが、評論する方には、評判が悪い。だから小林旭の評価は低すぎたのだと思う。だが、今になって冷静に彼を見ると、その時代の誰よりも芝居が達者で、歌が上手く、二枚目でも三枚目でも主役でも脇でもいけて、その上存在感は十分ある。しかもアクションはスタントマンなしでこなす。こんなスーパースターはいまの映画界にはいないのではないか。スターらしいスターである。
今回、小林信彦と大瀧詠一が責任編集している。小林信彦は「アキラじゃなかったら、この歳で編集なんかやりませんよ」と最後に語る。彼らに西脇英夫を加えた鼎談では、旭の魅力が遺憾なく、書かれている。
日活が生んだ只一人のスーパーヒーロー。芝居が出来て、唄が歌えて、主役しかやらない。 ジョン・ウーが憧憬するスーパースター、美空ひばりが歌について尋ねた天才歌手、日本映画界不世出のアクションヒーロー。ほんとにこの本を読むと小林旭の凄さがわかる。
話は少しそれるが、小林旭が彼の本「さすらい」の中で、赤木圭一郎を唯一のライバルとしてみていると書かれてあった。二人は孤独と哀愁、どこか翳を抱えているところが似ていたのかもしれない。
2002/05/31(金)
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